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教育関係者の方へ

ヤングケアラーは、本人・保護者が「当たり前」だと思っていたり、
家庭内の問題のため人に言いにくいというこどもも多く、表面化しづらいのが現状です。
こどもたちのどんなところを見ておけばよいか? 外部機関とどのように連携すればよいか?
スクールソーシャルワーカーとして活動されている黒光さおりさんに聞きました。

黒光さおりさん
黒光さおりさん
社会福祉士。公認心理師。元ヤングケアラー。14年間の生活保護ケースワーカーを経て、現在は、尼崎市、宝塚市の小中学校および兵庫県立湊川高等学校でスクールソーシャルワーカーとして勤務。小中学生・高校生のヤングケアラーを含む児童生徒への支援に従事している。尼崎ティーンズ応援ネットワークを立ち上げ、尼崎市内でヤングケアラー当事者会を主催。ヤングケアラー支援のあり方について、現場や当事者の思いを伝えるため、各地で講演活動を行っている。
Q

「ヤングケアラーかも?」と気づくために、普段からどんなポイントに注目しておけばよいでしょうか?

A

特徴としては、以下のようなことが挙げられます。

  • 遅刻や欠席が多い
  • 眠そうで覇気がない
  • 運動好きな児童生徒が運動量の少ないクラブに入部している
  • 校外学習などお弁当や準備のいる活動を休む
  • 教科書や学用品に小さいこどもの落書きや食べ物のシミがある
  • 保護者の返信が必要なお手紙が毎回返ってこない
  • 給食エプロンがシワシワ
  • 体操服や制服・上靴が洗えていない

ですが、これらの特徴があれば、必ずヤングケアラーである、というわけではありません。明るくしっかりしており、周りの様子をよく見て行動する児童生徒の中にも、ヤングケアラーはいます。
気付きやすいポイントは、その子らしくない行動が増えること、持っている力が発揮できなくなることなどの変化です。例えば、きっちりしたタイプの児童生徒が、「急に忘れ物が増えてくる」、「宿題ができていない」、「遅刻が増える」、「弁当を持ってきていない」、「部活や習い事をやめる」、「保健室への来室が増える」などのような変化が見られます。

Q

ヤングケアラーかもしれないと思っても、こどもはなかなか自分のこと・家のことを話したがりません。どうすれば話してもらえるでしょうか。

A

児童生徒は、家庭の事情を話すことで、大切な家族が責められたり悪く思われることを強く恐れています。聞き出そうとする姿勢を前面に出しすぎると、誰しも警戒し、嫌な気持ちになります。大切なのは、事実を無理に突き止めることではありません。児童生徒にとって話したくなる信頼できる大人ができること、「いつでも聴くからね」という言葉や態度でのメッセージを投げかけ続けることが大切です。
いきなり家庭の話から始めるのではなく、普段から会話を楽しむ中で、話す準備ができるのを待ちましょう。そうすると、何気ない会話の中でポロリと家庭の話が出てくることが多いです。
また、教員自身が弱みを見せると、話しやすくなることもあります。その児童生徒にとって、どの教員や支援者なら話しやすいか、どんなシチュエーションが安心かを工夫した上で、待つことが必要です。
また、「ヤングケアラー」という言葉は、大人が児童生徒を理解するための言葉であり、児童生徒に自覚を迫るために使わないよう配慮をお願いします。

Q

ヤングケアラーかもしれないこどもがいたときに、学校の現場だけでは対応できない部分も出てきます。そんな時はどこと連携すればよいでしょうか。

A

日頃からスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー、キャンパスカウンセラーなどを含めた校内支援会議で、心配な児童生徒の情報共有を行うことをお勧めします。幼稚園や保育所、小・中学校などその児童生徒が前に所属していた校園や、兄弟の所属する校園との連携により、重要な情報が得られることがあります。児童福祉関係機関と連携する必要が出てくれば、校内の意思決定に伴い、スクールソーシャルワーカーが連携の連絡調整を行います。スクールソーシャルワーカーが配置されていない学校の場合は、管理職や生徒指導担当教諭などから、各自治体の児童福祉関係機関に連絡していただくとよいでしょう。そこから、児童ケースワーカー等がその家庭に必要な関係機関(高齢、障害、保健など各関係機関)との支援の調整を行うことになります。
ヤングケアラーの場合は、心理的な支援だけでなく、家庭支援や環境調整が必要であり、関係機関との連携は大切です。個人情報に配慮の上、連携してください。