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- ヤングケアラーNote
学生でありながら、家族のケアを担っているヤングケアラー。
その家庭の状況はさまざまです。
中には学校生活にまで影響が出てしまったり、
心やからだに不調を感じるほど重荷になってしまっていることがあります。
おだやかに過ごしているように見えても、実は、周りに相談できずに悩んでいるかもしれません。
ヤングケアラー・コーディネーターのゆみこ先生と、
いろいろなケースのヤングケアラーについて見てみましょう。
〈一般社団法人ケアラーワークス代表理事〉
田中 悠美子 先生
ソーシャルワーカーと呼ばれる福祉の専門職です。病気や障害のある家族をケアしている学生の悩みやモヤモヤを一緒に考えたり、その人が自分らしく生活ができるように応援したりする仕事をしています。彼らは一人ひとり、状況が異なります。そして、楽しいやうれしい、つらいなどいろいろな気持ちがあります。しんどさや寂しさを感じるときに、安心して話せる人や場所があることが大切だと感じています。
- 学校や地域の方々からのヤングケアラーに関する相談にアドバイスをしながら、本人の意向に寄り添って、必要なときには、生活に役立つサービスや、学習、就労等のサポートにつなげる仕事です。
小学校低学年のときに
バスケットボールの大会でMVPを取るほどの腕前。
しかし3年生になると
部活を辞めてしまいました。
放課後の遊びに誘われても
近頃はまっすぐ帰ることが多いようです。
「なにかあるの?」と聞くと
浮かない顔をしていることも。
両親が共働きで忙しいため、
幼い妹の世話をしています。
部活は続けたかったけれど、
妹がもうすこし大きくなるまで、
しばらく我慢することに。
「家族のことは家族でやらないと」
という想いで、
日々奮闘しているようです。
クラスのなかで目立つ方ではありませんが、
温厚で優しく、
みんなから愛されている男の子。
休み時間はあまり外で遊ばず、
自分の机や図書室で、
眠って過ごすことが多いようです。
周りの友達に心配されても
「寝るのが好きなだけだよ」と
いつも笑顔で答えています。
ひとり親のお父さんが病気で
自力で動くことが難しいため、
生活のサポートをしています。
お父さんのサポートにくわえて、
家の掃除や洗濯を終えてから
学校の宿題をするため、
睡眠時間が
足りない日もありますが、
学校との両立に励んでいます。
休み時間の過ごし方にも、「家で眠れていないのかな?」「家で忙しくしているのかな?」と気づくきっかけは見られます。本人の体調や心になにか異変がないか、そっと気にかけてほしいと思います。
まわりの同級生に比べて大人びていて、
先生からも一目置かれるような存在。
部活はやっていないけれど、
放課後は友達とは過ごさずに、
すぐに一人で帰ります。
遅刻しがちなところがあり、
最近は午後から登校してくることも
少なくないようです。
お母さんひとりで家のために働いているので、
自分にかかるお金は自分でどうにかしようと、
アルバイトをしています。
友達に知られないよう
隣町まで働きに出ているため、
帰りが遅くなって
翌朝起きれないことも
あるようです。
家計を支えるために働いている場合、学校との両立に苦労しており、遅刻が増えてしまうことがあります。家庭のことを知られたくない気持ちもありますが、困っている様子があれば、頼れる大人に相談できるように声をかけましょう。
当事者インタビュー
「楽しい時間を過ごす」ことが
友達からのありがたい
サポートのひとつ
高橋唯さん
高次脳機能障害、片麻痺、アルコール依存症のお母さんの
ケアを幼少期から続けている。
- どんなケアをしていたの?
-
基本的には母の家事のやり直しです。母は自分なりに家事をしてくれましたが、肉が生でも気がつかずに食卓に並べたり、掃除をしようとして余計に汚してしまったりと、上手にできないことも多く、毎回やり直す必要がありました。
- ヤングケアラーだと
気づいたきっかけは? -
大学3年生の時に言葉を知りましたが、自分のこととは思えませんでした。その後、母が家の中で怪我をしたため、週末ごとに一人暮らしの家から実家に通う生活になった時に、「これはケアなのかも」と気が付きました。
- 学生時代に助けになったものは?
-
塾の存在です。家でのケアからも学校からも離れ、塾で過ごす時間があったからこそ、「世界は学校と家だけじゃない」と思うことができました。
- 高橋さんにとって友達は
どんな存在だった? -
ずっと普通の友達で居続けてくれたのが嬉しかったです。好きなものについてのおしゃべりなど日々の友達との思い出が、今もケアの励みになっています。直接ケアの負担を取り除くことは難しいですが、「楽しい時間を一緒に過ごす」ということも大切なサポートだと思います。
- 家族を支えているこどもたちに
メッセージを -
ぜひ周りの人に今の状況や、自分のやりたいことを伝えてくれたら嬉しいです。なかには「自分はそれほど大変じゃない」「自分はヤングケアラーだと言いたくない」という人もいると思います。無理に認める必要はないですが、ヤングケアラーという言葉を頼ってみると、メリットになることもあるかもしれません。自分に得がありそうな時にはうまく活用してみてください。
その友達の気持ちを想像しながら、友達として、あなたができることをやってみましょう。
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むりに悩みを聞きだそうとしなくても、「大丈夫?」の一言だけで、きっと心は軽くなります。
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勇気を出して、大人を頼ってみてください。力になりたいと思っている大人は、身の回りに必ずいます。
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頼り先として「相談窓口」という
選択肢も。その友達の状況にあった適切な相談先があります。
- 相談できる場所があります
- 相談先はこちら
どこか浮かない顔をしていても、無理に理由は聞かず、そっと見守ることも大切です。ただ、あまりに無理をしている様子だったら、「大丈夫?よかったら話してね」「先生に相談する?」と声をかけても良いと思います。